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航空需要予測(前編);日本人海外渡航は?

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 公的機関あるいは航空機メーカーによると、日本を発着する国際線利用者数は中長期的なレンジで堅調に伸びていくと予測しています。 
   国土交通省は、空港整備計画等の基礎数値として、平成18年度の日本発着の総旅客数が5806万人(註)だったものが、7年後の平成24年度には7180万人(年率3.6%の成長)に、12年後の平成29年度には8070万人(年率3.0%の成長)なると予測しています。 ボーイング社による今後の20年間の予測では、中国を除くアジアー太平洋地区で年率5.4%の成長、エアバス社によると日本=米国の市場は今後20年間で年率4.2%の成長と予測しています。

   ところが最近の集計によると、その中で平成19年度の日本人の海外渡航者数は17,298千人(対前年比▲1.3%)のマイナス成長でした。 これは一時的な減少なのでしょうか? あるいは、日本人海外渡航マーケットの変調なのでしょうか?

    (註) 推計値5806万人の旅客数は、概ね、日本人の海外旅行者数1700万人×2(往復)+外国人の訪日旅客数800万人×2(往復)+通過旅客数400万人×2(往復) で構成されています。

s日本人海外渡航.jpg    統計的な方法による中長期の需要予測

    一般的に中長期予測では、手法として時系列分析あるいは回帰分析の統計的手法をとります。 前者は、これまでの傾向が今後とも続くであろうとの前提での予測手法です。 

    過去を振り返ってみると、第一次オイルショック、第二次オイルショックと経済の停滞が続いた1973-1985年の頃は年平均6.6%の成長でしたが、第三次海外旅行ブームといわれた1985-1995年では年平均11.9%の急成長。 1995年以降は経済の停滞とともに年平均1.3%までに落ち込みました。至近の傾向が続くならばそれほど大きな成長を見込めないことになります。
    一方、後者の手法は、需要と将来が予測可能な経済変数との相関を調べ、経済変数の予測値との関係で、需要の将来を予測するものです。 需要=f(母集団;説明変数)の式で表現し、需要の母集団は旅行をする人々なので日本人人口の指標が適切です。また説明変数としては、需要動向と関係が深いと思われる指標を選び、需要との相関を調べます。例えば、企業の出張者数の説明としては、企業業績、国際貿易額などの指標が考えられますし、観光需要ならば、豊かさを示す一人当たりの収入、余暇日数などが考えられます。また海外旅行への旅行費用単価も重要な指標です。

    こういった予測に利用するための指標選びで重要なことは、その指標(=説明変数)の将来の値が予測可能であるということです。後者の手法を用いて需要予測をやってみましょう。

   例1.需要を経済活動の活発さあるいは国の豊かさの指標のGDPとの相関で予測

   需要=f(日本人人口×一人当たりの豊かさ)と考え、一人あたりの豊かさを GDP/日本人人口とすると、需要=f(GDP)と想定できます。 1995-2007データを用いて旅客数とGDPの相関を調べました。 弾性値は0.60ですので、経済成長率の0.6倍で需要が成長したということになります。 (需要が急成長した1985-1995年の期間をとって分析すると弾性値は3.1となり、経済成長の3倍をうわまわるぺースで伸びました。) この分析をベースとするともとに予測すると、GDPが年率3%の伸びを予測すると、需要の伸びは3×0.6=1.8%となります。

   例2.需要を日本人人口との相関で予測
   需要=f(母集団の大きさ)と考えてみます。1995ら2007年までのデータを用いて需要と人口との相関を調べると弾性値は1.71です。社会問題研究所によると2007年にピークを迎えた日本人人口もマイナス成長に転じて、今後は年平均▲0.2~0.3の減少と予測しています。人口の増加率が負に転じた場合にも同様な弾性値なのかは検証できませんが、それが適用される場合は、需要も年平均▲0.3~0.5%の減少という予測になります。

 マーケット動向からの中長期予測

   需要を予測するもうひとつの手法であるミクロ的な視野からの予測をやってみましょう。 マーケット調査によると海外旅行の目的は、3割が業務目的で7割が観光目的です。人口当たりの海外旅行発生率は2006年実績で13.7%で、男女年代別の出国率を比較すると、40代男性(28%)、20代女性(24%)、30代男性(23%)、50代男性(22%)が上位です。

   すなわち現在の海外旅行は40-50代男性の業務渡航、20代女性の観光旅行に支えられているといえます。 また、最近の傾向として、余暇がでてきた熟年層の海外旅行が活発で、男女ともに60台の出国率が伸びています。その一方、若年の女性のライフパターンが変化にともない、海外旅行への関心が薄まりつつあり、20,30代女性の出国率が減少しているのが懸念材料です。 若者たちのヴァーチャル志向(ゲームや携帯など)により、旅行というリアリティへの関心が減ってきたのかも知れません。

   社会問題研究所の人口予測(減少傾向の予測)をベースに年代別の旅行発生率を想定して、今後の旅行者数を試算してみました。

   例1 人口は減少傾向、年代別の旅行発生率は2006年レベルの現状にとどまるケース。
 その試算では、人口は減少しますが5年後までは旅客需要はゼロ成長。10年後にはマイナス成長に転じます。

   例2 人口は減少傾向、年代別の旅客発生率は至近の5年間の増率にそって変化すると想定したケース。
その試算では、20代の旅行は減少しますが、50,60代の熟年層の旅行が増加し、全体では、5年後まで1.7%、10年後まで2.0%の成長が予測できます。


 まとめ

 日本人の海外旅行は成熟期に入ったとされています。 日本経済が成熟期に入っており、人口も減少傾向。 国民生活に余裕ができ余暇を重視する熟年層の増加傾向がプラス要因ですが、航空業界では燃料費の高騰による航空運賃の上昇、あるいは世界的なテロによる航空の安全性の問題等の航空利用者にとってマイナスの要因も多く、需要の見通しは極めて困難です。しかし、上記のどの試算例をとっても需要の伸び率は高くなく、今後は残念ながら年率3%を超える増加は望めない、と言わざるを得ないのではないでしょうか。


㈱航空経営研究所 橋本邦夫