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(2)日本の交通・航空政策などから来る問題

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(2)日本の交通・航空政策などから来る問題

以下の5つをとりあげたいと思います。

 

       総合的・戦略的な交通・航空政策が必要;

 

  航空政策は、これまで空港や路線を「造り、転がす」ことに力点が置かれ、「国全体の社会資本として活かす」といった総合的・戦略的なものではありませんでした。アクセスを軽視した空港造りが行われ、都市づくりとの連関、鉄道・道路・海上輸送の戦略的分担も不十分でした。

このため、折角投じたお金や空港という社会資本が十分活かされない、非常に勿体ない状況が続いています。

民営化と規制緩和の促進も、参入・増便希望の多い大規模空港(羽田空港、成田空港)では、供給規制(発着枠規制)があり、一方では、規制のない地方空港には航空会社が参入しないという、その効果を十分発揮できない「勿体ない状況」にあるのです。 

       折角の資金(税金等)と社会資本(空港等)、そして民間活力を、国民全体のためにより有効に活かすためには、国や地方による「戦略の描画と推進」が必要で、今後そのリーダーシップが求められます。

 

       空整特会と航空周辺事業への二重・三重の高負担

 

多くの空港を建設し、その運用コストも賄う社会資本特別会計(旧空港整備特別会計)の負担は航空会社や消費者にとって甚大なものになっています。

因みに国内で航空会社が支払う着陸料・航行援助料・航空機燃料税の額は3,000億円を大きく上回ります。

参考ですが、「公租公課+エネルギーコスト」について、航空と新幹線を比べると、航空は費用の35%割を超えるのに対し、新幹線は10%にも満たないようです。

 

空港では他にも、独占的に運営する施設やビル管理会社に対して支払う賃料等が、少なからぬ負担になっています。

因みに国が発表した空港別収支を見ると、赤字空港が大半ですが、その空港で運営する民間のビル会社等は軒並み黒字にあります。旅客需要の少ないところでも、利益が出るレベルに料金設定ができることによると考えられます。

 

旅客から得る収入の多くを、この種の負担にまわさなければならない構造が、航空会社の儲けを更に薄くし、収支を苦しくする要因として働いています。

また海外のLCC(格安航空会社)が、日本への就航を躊躇っている大きな理由にもなっています。

 

    

    ③ 不採算路線;

   需要の太い、いわゆる稼げる路線が、新規航空会社の参入等の規制緩和で競争が

激化するにつれて、航空各社が赤字の低需要路線を運営できる体力がなくなってき

ました。

一部の自治体では、積極的に需要喚起に取組んでいる事例もありますが、多くは

撤退がなかなか許されない中で、収益性は航空会社の自己責任となっている実情は
航空会社に過酷です。

 需要開拓には関係者の協力が不可欠で、地域活性化施策や空港アクセス等の条件

整備など、自治体が果たすべき役割も沢山あるのです。

 

④ 自由化政策に関連して;

「自由化、競争促進政策」の経営環境への対応が十分でなかったのは、JAL自体の経営の問題です。 しかしながら、国際線、国内線それぞれの基幹となる成田空港、羽田空港には発着枠規制があり、自由な参入、増便、撤退ができない環境下での「自由化、競争」の促進政策は、限定的な競争を生みだし、結果として、JALを疲弊させました。

 

(国際線) 自由化の進展は、まず国際線を運航する本邦企業を複数化することから始まりました。 すでに外国航空会社と熾烈な競争を展開していたJALにとって、円高によるコスト競争力の低下で収益性が悪化していた状況で、さらに、限定的な成田発着枠増が優先的にANAに配分されたため、日本人市場での本邦企業間の競争が激化し、JALの収益性をさらに悪化させました。

 

(国内線) 地方路線を据え置いたまま、羽田の発着枠を優先的に新規航空会社に配分し、新たな競争が始まりました。 運賃規制も緩和され、新規航空会社は低運賃を武器に需要の太い路線に参入し競争が激化しましたが、羽田空港を発着する路線の供給を拡大できず、経営が成りたたなくなるケースもでてきました。 新規航空会社のスカイマークは、収益性の高い路線の事業に限定して生き残りを図り、その他の航空会社は、ANAとの提携に生き残りを図りました。 その結果として、大手2社による寡占的状況はあまり変わらず、限定的な高需要路線で競争を生みだし、JALの国内線も収益性が低下しました。

 

そのような限定的な競争促進政策にJALは十分に対応できませんでした。 

一方、成田、羽田の基幹空港を整備できずに中途半端な競争促進政策をすすめ、地方路線の撤退がままならぬ状況下での主要路線の競争という航空政策がJALに及ぼした影響は無視できません。

 

    ⑤ JALJRとの比較;

JALと同じように民営化された大手JRと、航空会社を比較してみると、次のことが言えると思います。

「民営化があって業界内競争が余りなかった鉄道」と「業界内競争を激化させた航空」との差、及び負の資産を切り離したあとで「不動産等の資産を持つ鉄道」と、
「飛行機以外に資産を持たない航空」との差が両業界を分けることになったと思うのです。


大手JRは、収益性の高い新幹線と都市路線でほぼ独占状態が続き、他方航空は

      高収益路線こそが競争の舞台となりました。また大手JRは、鉄道利用客を対象にした独占的駅中ビジネスなどの周辺部門でも収益を上げています。
 航空会社の収入は2地点間の競争的輸送から得るものが殆ど全てで、空港を舞台とした事業を持たないことが、低収益性と収支不安定の1つの要因としてあると思う次第です。

 

 

      《続く》
 1.はじめに 
http://www.aviatn.com/2009/10/jal1.html
 2.経営危機の引き金  http://www.aviatn.com/2009/10/jal-34.html
  3.3つの大局的視点  
  (1)航空事業が持つ構造的特性 
http://www.aviatn.com/2009/10/1-6.html

  (3)JAL自体の経営の問題 http://www.aviatn.com/2009/10/jal-35.html
  4.JAL再建に望むこと  http://www.aviatn.com/2009/10/jal-36.html