TOP PAGE

【企業年金についてのオピニオンⅡ】破綻の引き金を引くことは避けたい

|

【企業年金についてのオピニオンⅡ】

事態の深刻さを真剣に受け止めるとともに、

OBとして破綻の引き金をひくことは避けたい!

 

 JAL経営陣と日航基金は、1123日から各地で会社現状の説明と、減額案の骨子を説明しています。そして1215日を締め切りとして、その案への合意を要請しています。

 その要請は、減額案への合意と、改定成立後に特例一時金を選択しないことです。

 一方JALの経営破綻は、基金解散に直結するものであるだけに、OBも生活に深刻な影響を受けることになります。

 このオピニオンは、仲間に呼びかけるというよりも、OBの一人である私自身の、事態認識と心情を吐露する性質のものです。

 

1.事態の深刻さ

       キャッシュフローの悪さ

JALは今、購入する新機材への支払に充てる資金2009年度で約1,100億円)借入金返済のための資金2009年度下期~2010年度上期で約2,200億円)はもとより、日常の運転資金にもこと欠く状況にあると言えます。

2009年度の上半期の運転資金(営業カッシュフロー)は、1,300億円の赤字(資金マイナス)を600億円の減価償却費(資金プラス)で埋められない、実質▲700億円の資金流出の状態です。(債権債務の支払時期ズレなどのプラス要素により、実際の決算値は▲400億円のマイナス。)これは毎日約4億円ずつ運転資金がなくなっているということです。

日々の運航をつなぎ融資で対応しながら、この流出を止める見通しを至急にたてないと、再生支援機構による支援ラインにも乗り難いということです。

 

       国際線収支の深刻さ

その主因は国際線の収益性の低さにありますが、対前年で収入が半減している現実を、短期間で大きく回復させることは、非常に難しいでしょう。

 

   例えて言えばJALは今、病院の集中治療室の重態患者のようなものと私は思います。

 

2.年金問題の位置づけ

       問題の本質は上記であって、年金問題が深刻な経営の最大の要因というわけではありません。

しかしながら、積み立て不足と運用資産不足への補填は、その額の大きさから、再建には不可欠の課題であることは間違いありません。

 

       そして今や、年金の減額という課題は、再生支援機構の支援ラインに乗れるかどうかの、重要な試金石となっています。そのことに異論があったとしても、現実は、政府・マスコミ・世間の常識とまでなってしまっており、抗いようのない与件として受け入れざるを得ないと考えます。

 

       現在要請されている回答の期限については、各自が内容をよく理解できるには説明の不十分さは否めませんが、再建支援ラインに乗せられるかどうかのタイムリミットからは、JALとして選択の余地がないもの、また提案の内容についても、もはや代替案も妥協案もないということだと思っています。

 

3.実質的選択肢は2

       ことここに至っての選択肢は2つと私は考えています。

ひとつは、会社の要請どおり、会社提示の減額案及び特例一時金を選ばないことを含めて選択すること、そしてもうひとつは、「実質的に」基金の解散を選択する、ということです。

そして前者にOBの3分の2以上が合意の意思表示をすること以外は、結果的には後者を選択することと同じになると思います。即ち、意思表示をしないことも、減額案に賛成しつつ特例一時金を選ぶことも、いずれも結果的には後者(=基金解散)に辿り着くことになると思うのです。

 

       前項で述べた結論は、以下に述べる私の「今後の展開予想」に基づくものです。

1)  減額案が通らない;支援ラインに乗らないため、法的整理、そしてそこからは基金解散がもたらされる。今の状況下では、政府は特別立法も行わず、ストレートに法的整理に行くものと思います。

2)  減額案に賛成するが特例一時金を選ぶ;資金原資が余りにも大きく毀損するため実質的には成り立たないプランで、道筋としては上記と同じでしょう。

 

3)  会社提示の減額案を遂行する目処をつけることのみが、支援ラインに乗れる「可能性」を開くと思われます。ともかくも、再建プランを立てることへの望みが生まれるということになります。

この場合、OBが減額後の年金を平等に受けられるように、資金原資上の手立ても伴われなければならないでしょう。

  

4.反対するための覚悟

反対(意思表示なしも含みます)には、それがもたらす可能性が極めて大きい「法的整理」と、その結果としての「基金解散」という事態への心づもりが必要といえます。それを怠ると悲惨なことに遭遇しかねません。

       解散の方向が決まれば、配分すべき資産の整理が済むまで、一定期間、年金がストップする可能性があるでしょう。これは年金生活者には死活問題となります。

  

       また、「OBが破綻の引き金を引いた」とする、政府・マスコミ・世間の「予定された構図」で取り扱われることになると思います。その取扱いが適切とは言えないとしても、非難には抗いようがないと思われます。

勿論現役の怨嗟は想像に難くありません。

  加えて、これまで心情的に支援して下さった顧客の「JAL離れ」は一挙に加速するでしょう。それは、お客さまの支えが全てのサービス業には耐え難いことです。

 

       法的整理になれば、コストのかかる(会社の負担割合が大きい)組合健保が廃止されて、協会健保になるものと思います。OBは健保の特例退職被保険者から、国民健康保険に移行することになります。EFOB会組織等の諸制度も殆どなくなると思われます。つまりOBは、これまで共有していた故郷を失い、心情的に根無し草になりかねないということです。またJALで培ったノウハウも、その価値や活かせる機会が大きく減少するものと考えざるをえません。

 

5.今自分がなすべきこと

      会社提案とそれへの回答によって、OB自身にふりかかってくるであろう状況について思いをめぐらすことが、自分のために不可欠と思います。その大きな一つが「基金解散」です。

 

      そして、限られた資料や情報の中ですが、自分自身の年金がどのようなものになっているか、会社提案ではどうなるか等を具体的に数字で確認することが大切と思います。基金の相談ダイヤルに、理解できるまで聞いてみることも有効な手段の一つでしょう。会社の説明不足を責めたい気持ちは一杯あるとしても、今は自分と家族の生活を護るために、そうした確認と対応を自ら行うことが必要な状況になっていると思うのです。

 

      そして、沢山ある会社へのわだかまりを今は一旦別のところに置いて(別の機会に出すこととして)、おそらくは最も条件が悪くなる「基金解散」、それに至るJALの破綻を招来しない選択をしたい、と私は思っています。

 

      自分自身がJAL30余年心底打ち込んできた、いわば自分が「社会的に生きた証(あかし)」であるJALを破綻させたくはない、少なくとも自分が「破綻の引き金を引きたくない」、今はそういう気持ちで一杯です。

 

以上

 

平成21124

赤井奉久