JALはどう変わったか? 第3四半期決算簡易分析
先日発表した第3四半期決算をもとに、JALが破たん前と比べてどう変わったかを、
2008年度の第3四半期決算と比較して眺めてみた。
同時に、これに対比してANAがどうなったか、両社の規模等の差はどうなったかについても比較した。
1.3年間でJALはどう変わったか?(表1、表2参照)
① 収入規模; 営業収益は1兆5千億円超の収入が、9千億円強に減少、▲6千億円以上の減(▲42%)となった。
(内訳) 国際旅客収入は、5702→2890億円とほぼ半分になった。
国内旅客収入も、5210→3673億円と▲3割減。
貨物郵便収入に至っては、1726→675億円と▲6割減。
航空事業以外の分野でも、1850→932億円と半減した。
② 収益性; 営業利益は、▲89億円から、1617億円の黒字へと著しく改善。
これに伴い、当期純利益も▲19→1460億円と大幅黒字となった。
③ 財務状況; 機材の売却と減損処理、事業売却等によって、総資産は1兆8千億円超から1兆円強に圧縮された。
同時に債権放棄等によって、負債が約1兆円圧縮され、また資本注入等で純資産も1400円増加した。
現時点の有利子負債は718億円。
④ 際内別内訳;
国際旅客収入の減少(▲49%)は、供給座席(ASK)を▲47%減らしたことで、
旅客(RPK)が▲45%減少、加えてプレミアム旅客減の影響等で収入単価が▲10%
近く低下したことによる。
(発着旅客単価64千円→58千円、収入キロ単価14.3→13.1円)
国内旅客収入の減少(▲30%)は、供給座席(ASK)を▲29%減らしたことで、
旅客(RPK)が▲31%減少したことによる。収入単価は小幅上昇した。
貨物郵便収入(▲61%)は、貨物専用便事業からの撤退と、旅客便の貨物スペー
スの減による。キロ当たり単価も▲6%低下した。
座席コストとB/E(損益分岐利用率);祭内計の簡易試算によるが、座席コストは
大幅に低下(11.2→8.4円;▲25%)し、この効果によってB/Eは50%となった。
実際の搭乗率はこれより高い66%のため、収益性が大きく向上したもの。
2.では3年間でANAはどうなったか?(表1、表2参照)
① 収入規模; ANAも営業収益規模では若干の減(▲3%)となった。
国内旅客収入の減少(▲522億円)と、航空事業以外の分野の収入減が大きく、国際旅客の規模拡大による増収が少なかったことによる。
② 収益性; 営業利益は、403億円から、911億円へと収益性は大幅に改善。
これに伴い、当期純利益も94→338億円と増益になった。
③ 財務状況; 増資と借入金によって約3000億円の資金を調達、総資産は1400億円増加して、1兆9千億円となった。
現在の有利子負債は約9千億円。
④ 際内別内訳;
国際旅客収入は、供給座席(ASK)増+20%で、旅客(RPK)が+24%となった
ものの、収入単価の落ち込み(約▲20%)の影響によって減殺され、+1%の増収に
とどまっている。
国内旅客収入は、供給座席(ASK)の減▲6%によって、旅客(RPK)が▲10
%減少したことで、▲522億円の減少。
貨物郵便収入は、貨物専用便の増強や国際線のベリー増等で貨物量が+20%となっ
た。しかし収入単価の低下(▲10%)もあって、増収は+7%に留まった。
座席コストとB/E(損益分岐利用率);祭内計の簡易試算によるが、座席コストは
低下(11.3→9.5、▲16%)し、B/Eも57.5%まで低下した。
3.JAL・ANAの規模差はどう変わったか?(表3、表4参照)
① 収入規模; 2008年度には、JALの営業収益の規模は、ANAの1.4倍であった
が、2011年度にはANAを▲15%下回る規模となった。
(内訳)JALの2008年度国際旅客収入は、ANAの2.4倍の5702億円だった。
しかし2011年度には2890億円と、ANAを2割上回る程度となった。
JALの国内旅客収入は、2008年度はANAを▲5%下回る程度であったが、
2011年度には▲26%下回った。
JALの貨物郵便収入は、2008年度にはANAの1.9倍あったが、2011年
度は逆転して、ANAを▲3割下回る規模となった。
航空事業以外の収入についても、JAL/比率は、1.9倍から0.77倍へと
逆転した。
② 収益性; 2008年度は、JAL赤字、ANA黒字であった。
2011年度は両社黒字ながら、JALの収益性はANAを大きく上回るものとなった。
(営業利益) JAL;1617億円、ANA;911億円
(当期純利益)JAL;1460億円、ANA;338億円
③ 財務状況; 総資産規模は、2008年度には両社1兆8千億円程度で接近していた
が、2011年度は、JALは固定資産が減少したこと等により、ANAの約半分と
なった。
有利子負債は、JALが718億円と、1000億円を割り込んだのに対し、ANAは
約9千億円となっている。
純資産は、両年ともにANAが多い。
④ 際内別内訳;
国際旅客収入では、搭乗率はANAが約4ポイント高いのは変わらない。
収入単価は、2008年度時点ではANAが約10%高かったが、2011年度にはほぼ
並んだ。
国内旅客収入では、収入キロ単価は、JALが15%高いという傾向は変わらない。
但し発着単価はほぼ同じ(JALの平均距離が短い)。
搭乗率は、2011年度は規模縮小したJALがやや高い。
際内合計での座席コスト、B/E(いずれも簡易試算)を比較すると、
2008年度には並んでいた座席コストが、2011年度にはJALが約1割低くなり、
(JAL8.4円、ANA9.5円)収入単価には大きな差がないことから、B/Eは、JAL
がANAより大幅に低い50%となった。
それと搭乗率の差は、JALが16ポイントあるのに対し、ANAは9ポイントと
小さく、それが収益性の差を表している。